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地盤の性質と建物の揺れ方の関係のはなし

見逃した地震に関するNHKスペシャルを視聴しました。

 

NHKスペシャル 「大地震 あなたの家はどうなる?~見えてきた“地盤リスク”~」https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2017077207SC000/

 

先の熊本地震で、表層地盤の性状と厚さがごく近い範囲でも倒壊するかしないかの明暗を分けたことが分かったとのこと。

単に柔らかい層が薄ければ安全、厚ければ柔らかくて危険というわけではありません。

 

柔らかい層の厚みによって到達する揺れの周波数が異なり、その周波数と建物が揺れる「固有周期」が近いと大きく共振してしまいます。

益城町では柔らかい粘土層がちょうど10メートルほどの地域が大きな被害を受け、その前後の地盤では倒壊を免れていました。

そのような地盤の性状をわりと簡単に測定できる機器が開発されてより狭い範囲で地震動の周波数特性を予想できるようになっているようなのです。

地震ハザードステーションJ-Shisの地盤増幅率マップも年内中に従来の250mメッシュよりも細かくなるとか。

 

そこで話題は耐震設計に移り、「木造建築の耐震設計にお詳しい」東京都市大学の大橋好光先生登場!

 

(建物の固有周期を地震の周期とずらすような設計法が提唱されるのかな?わくわく・・・)

 

大橋先生「とにかく硬くすることです。」(`・ω・´)((キリッ

 

へ???

番組の大半を使った地盤の振動周期の話はどうなったの??

硬いからいいとか柔らかいからいいとか言う話じゃなくて、地盤との相性が問題だというのが番組の趣旨じゃないの??

 

その後、振動台実験で石膏ボードの耐力壁の家がペタっと倒れて、間仕切り壁の一部、3尺巾を合板2枚張りに替えたところ倒れませんでしたー (/・ω・)/ という実験の様子が映し出されて、「合板は丈夫なんです。しかも釘のピッチを変えるだけで硬さが調整できるんです」という話で番組が締めくくられました。

 

確かに街場の工事で手っ取り早く耐震性を増すにはいいかもしれないけど、3尺巾とか一部分だけを固くするなら重心に近い所にしないと捻じれて危険なのだからそう簡単な話ではないはず。

 

大橋先生あたりはそんなことは百も承知であろうけれど、年間数十万棟も新築される住宅や築30年以上の耐震性の低い住宅を早急にどうするかということを考えられてるのだと思います。

 

しかし大量生産を標準にするかぎりは、設計法の難易度はあまり高くするわけにもいかず、そのことが進歩を妨げることになっているのではないかという気がします。

 

構造計算など無かった時代は地域によって、「こういう造りは壊れる、これなら壊れない」という経験値があったはずなんですね。京都盆地と大阪では町家の造りが違うと聞いています。それは地盤の特性によるはずです。

 

木造住宅レベルで地盤特性に応じて建物の固有周期を操作するような設計法が開発されるまでには相当時間がかかるでしょうし、出来るかどうかもわかりません。

 

であれば、数百年の間に地域で受け継がれた知見を前近代的なものとして、全国一律の簡単な仕様規定や構造計算に置き換えてしまうのではなく、伝統的な構法の意味を現代の技術から捉えなおして活用していく必要があるのではないでしょうか。