· 

白馬村 青鬼集落見学

8月16、17日に唐松岳から五龍岳への縦走登山をした帰り道、白馬村の重要伝統的建造物群保存地区、青鬼(あおに)集落を見学しました。

白馬山麓から東の長野方面に向かって、青鬼、鬼無里、戸隠と三つの集落が並んでいて、それぞれの集落に鬼に関する面白い言い伝えがあります。

 

かつて水無瀬と呼ばれていた村は鬼女を退治した後に鬼無里(きなさ)という地名になりました。

一方、青鬼集落は背丈が7尺もある傍若無人な大男に悩まされていましたが、奸計を図って岩戸に閉じ込めることに成功。

その大男が逃げ出して戸隠に落ち着き、怪力を生かして人々の役に立っていると噂を聞き、祟をおそれて「御善鬼さま」として村に祀るようになり、青鬼村という地名になったとのことです。

 

白馬から急峻な峠道を上がった先に集落の入り口があります。冬期に上がってくるのはなかなか大変そうです。

見学客用の駐車場で500円を寄付して、集落内は歩いて巡るようになっています。

 

集落は14軒。一軒だけ在来工法の家がありますが、その他は全て江戸後期または明治時代の建築です。

殆どの家が普通に暮らしている民家なのでプライバシーに配慮して静かに集落を巡ります。

集落の集会所を兼ねた「お善鬼の館」が唯一内部を見学できる家になっています。

 

この集落の建物は全て南面の長い側に入り口がある「平入り」となっていて、茅葺屋根の軒先を切り上げて二階に窓を作っていることが特徴です。広く立ち上がる立面が豪壮に見えます。

また、外部側の貫を塗り込めずに「化粧貫」としていることで、縦横の線が交錯する幾何学的な意匠が出現しています。

 

養蚕民家に多い、東西の妻側を切り上げた「兜造り」、屋根の中央を持ち上げる山梨の「突き上げ屋根」と比べて大きな窓面が取れるようになっているのは、冬に深い雪に閉じ込められるからでしょうか。

 

ウレタン塗りのフローリング…(-_-)

囲炉裏の上が吹き抜けになっていて、屋根裏に通じる開口部が設けられています。

他の地域ではカマドのある土間が吹き抜けになっていて、囲炉裏の上はスノコ張りの床があって上階の利用と煙抜きが両立する造りになっているものが多いですが、ここは逆に土間には天井があります。

土間の奥は厩になっているのでカマドは無かったのかもしれません。

実はこの後に行く戸隠のそば屋も同じ造りになっていたので、この地域の特徴でしょうか。

「厩の再現」… いや、これ再現か?

土間の上部。蚕は飼えそうにない。物置か。

ここで一番感動したのはこれ。

 

ツバメの巣まで茅葺屋根になってる!

外壁を土塗りにしているお宅。この集落の標準は白漆喰のようです。リフォームかな?カブの上になにやらプレートが…

斜面に合わせて妻側の軒を切り上げているのは豪雪地帯ならでは?

広縁の奥、床下を塗り込めた上で通気のガラリを設けてあります。普通はここは開け放ち。寒い地方の工夫ですね。

縁側の束は普通は束石に直接立てますが、土台を敷いているのは冬期にはここも塞ぐため?

ロシナンテ号でしたか。ドン・キホーテがお住まいのようです。

移住者かな?

豪雪地帯なので土蔵には雪囲いがあります。

下屋の部分は米蔵で、上部にある木造のスペースから米を落とすのだったと思います。

前の写真の木の井桁に藁束をかけて雪囲いの完成です。

ほとんど土蔵に見えません。

日本の棚田百選にも選ばれている集落の棚田では、ポリフェノールがブルーベリーの2倍以上含まれる「白馬紫米」という特別なお米が穫れるそうです。

前方に見える一番高い山は白馬岳。前日に縦走した唐松岳と五龍岳は左側に雲に隠れています。

青鬼集落を後にして、鬼の後をたどり、鬼のいない鬼無里を経由して、

戸隠のそば屋へ。

そう、鬼の目当ては蕎麦だったのです。

ここ戸隠でも囲炉裏の上部は吹き抜けに。

残念ながら囲炉裏は撤去。そしてまたしてもウレタン塗装のフローリング…

そばの実から自家栽培の蕎麦はもちろん美味しかったのですが、お手製のトマトの湯剥きとキウリの浅漬けが美味しゅうございました。