· 

吹抜がある部屋の冷暖房について

お施主さんより以下のようなご質問をいただいたのでお答えしました。

 

「吹抜があると冷暖房の効率が悪くなると思いますが、しかたがないんでしょうか?」

 

<お答え>
冷暖房の効きというのは、熱射や冷気といった外部からの負荷に対して、
冷暖房すべき室内の容積がどれぐあらいあるり、それに対して冷暖房能力がどれくらいあるか、

ということで決まります。
また、高さにより温度分布が違うので、どこに居るかによって感じる温度が違います。

吹抜があれば当然ながら部屋の容量が大きくなります。
構造的に平屋で、ロフトを2階として使う場合には、総2階の吹抜ほどは室容量は大きくなりませんが、
それでもメリット、デメリットがあるので、以下にご説明します。

・夏季について
1階の冷房は上部が吹き抜けていてもほとんど影響はありません。
なるべく冷房を使わずに済ませることを考えれば、むしろ上部は吹き抜けていて、
熱い空気は上の方に抜けたほうがよいと言えます。

2階に関しては、個室は戸を開けていると、下階に冷気が逃げるので冷房の効きは落ちます。
フリースペースは間仕切りがないので、単独では冷房できません。
リビングと同じ温度環境ですが屋根に近い分少し暑くなります。
これもなるべく冷房に頼らないで済むように、排熱ができる高窓などを設置することが重要だと思います。

全般的に夏季に関しては、吹抜がある方が快適性にも省エネにも有利だと言えます。

・冬季について
暖房には2種類あります。
1. 輻射暖房・・・囲炉裏、暖炉、床暖房、蓄熱暖房機など、赤外線にあたることによって直接暖を取るもの。体を直接暖めるだけではなく、部屋の空気も徐々に暖められていきます。また、赤外線と暖まった空気の両方により建物の躯体が暖められていきます。


2. 温風暖房・・・エアコン、ファンヒーターなど、温風を吹き出して部屋の空気を暖めるもの。こちらは、まず対流で部屋の空気を暖め、それにより建物の躯体を暖めます。また、吹き出す暖気が体に接することにより暖かさを感じます。

一般的な理解では、輻射暖房は直接暖を取るもので、温風暖房は暖かい空気により暖を取るものと考えられていると思いますが、

実際は、どちらも最終的には建物の躯体を暖めることにより、安定した室温が維持されるようになります。
輻射暖房は暖まるのに時間がかかる代わりに、一度暖まれば冷えにくく、
温風暖房は室温が上がるのが早い代わりに、止めるとすぐに冷えてしまいます。
薪ストーブや蓄熱暖房機は輻射と対流の両方の機能を兼ね備えます。

ご存知のように暖かい空気は上の方に上がっていくので、壁付けエアコンのような器具から出た暖気は
みな天井の方に上がっていってしまいます。
それで下の方は全然暖まらないかというとそんなことはなくて、対流により徐々に暖まっていきます。
そのあたたまるまでが天井の低い空間よりも時間がかかるということです。
シーリングファンを設置すれば対流が促進されるので、より早くあたたまるようになります。
しかし、普通の天井高の空間でも、暖かい空気は胸より上ぐらいの部分に溜まってしまうので、
空気を吹き出す暖房はどうしても”頭暖足寒”となってしまいます。

床暖房や蓄熱暖房機(深夜電力で蓄熱体を暖めるもの)の場合は、人がいる場所に直接熱が放出されているので、
天井高の影響を受けにくいと言えます。
薪ストーブの場合は対流による暖めにも大きな力を発揮します。
また、床置式のエアコンを床下に吹き出して、窓際の床下から吹き出し、オンドルのように使う方法もあり、
これも吹抜のある空間に向いていると言えます。

総合すると、夏季は吹抜があったほうが快適でかつ省エネであり、
冬季は、輻射暖房をメインに使うことにより吹抜があっても快適で、
エネルギー消費も抑えた生活ができるということになります。
また、吹抜を利用して冬季に日がよく入るようにすれば、晴れた日中は暖房がいらなくなり、
室容積の増加によるエネルギー消費の増加とある程度相殺できます。

夏に風通しがよく、無駄な日射が入らないつくりにして冷房の稼働率を少なくすれば、
冬の暖房費が若干高くなっても1年を通した合計では、

吹抜がない場合に比べて大幅にランニングコストがアップすることはないと思います。

コメント: 4
  • #4

    高野量平 (月曜日, 03 8月 2015 11:15)

    市原様
    ご質問の件、お答えいたします。
    1階の店舗部分を閉店してから2階の事務所部分で長時間作業をするかどうかがポイントです。
    1階の冷房と同時に稼働ならば、2階は最も小さなルームエアコンで十分です。屋根が折版むき出しなどで断熱がない場合はやや出力が強めのものにする必要があるでしょう。
    1階の冷房を止めて長時間作業する場合、定休日に事務作業する場合などは、部屋の容積がエアコンの容量を大幅に上回ってしまうので、効きが悪くなります。
    一つの方法は、店舗吹抜と事務所の境目あたりの天井に天井カセット式エアコンを取り付け、1階・2階兼用とすることです。
    吹出しの向きを上手く設定すれば、事務所部分にも冷気が行くと思われます。
    天井高さにもよりますが、冬場の店舗部分の足元は少し寒いかもしれません。物品販売なのか、飲食などの長時間滞留型なのかにより、1階に補助の暖房が必要かもしれません。ランニングコストも2階専用の小型エアコンを設置するよりは高くなります。
    もう一つの方法は、吹抜との境にカーテンを設置したり、サーキュレーターを置くなどして多少下階に冷気が漏れるのは良しとする事です。
    ご検討ください。

  • #3

    市原 (木曜日, 30 7月 2015 13:53)

    二階建て店舗兼事務所:1階部30畳程の店舗、階段上がって8畳程のスペース、間仕切り無し、屋根ソーラーパネル全面設置
    この条件での2階部のスペースを冷房する方法をご教授願えればと思います。

  • #2

    高野量平 (日曜日, 22 3月 2015 14:23)

    井筒さま。
    コメントありがとうございます。
    主に家の中で過ごされる時間帯にもよります。日中ほとんど家の中にいないならば日当たりを良くするメリットは少なくなります。
    仮にそうだとしても、せっかくの休みの日のくつろぎの時間に家の中が薄暗いのはいたたまれませんから、明かりをとるために吹抜にしたのは大正解だと思います。
    暖房が効きにくいようであれば、まずシーリングファンを設置するべきです。
    それでも温風暖房だと暖気は上に逃げやすいので、ペレットストーブなど輻射熱に当たれるものがあると良いと思います。煙突工事や燃料の調達、保管が薪ストーブよりもずっと簡単です。

  • #1

    井筒 玲子 (土曜日, 21 3月 2015 23:09)

    築73年の古屋を念願のリフォムーをし、明かりを取るため吹き抜けにしました。周囲からデメリットばかり聞かされ、ちょつと悲観してましたが、冬の対処法さえあればの回答に愁眉を開きました。有り難うございました。